Doctor's Column ドクターズコラム

ISSUE 32“一億総活躍”って?

  • 公開日:2015年12月07日

日本政府が掲げた“一億総活躍”という言葉が新聞などの紙面を賑わせているが、大多数の国民は何となく違和感を持っているのではないだろうか。過去を振り返ると、この“一億”は良い意味でも悪い意味でも使われてきた。“進め一億火の玉だ”は昭和16年、“一億玉砕”は昭和20年、当時を知る世代の人たちは思い出すのも苦痛だろう。敗戦直後の9月、首相の施政方針演説 “一億総懺悔”は、国家政策の誤りを認めたのは正しいとしても、国民にも戦争の道義的責任を負わせるような発言であり、責任の所在を曖昧にするのではないかと、国民の反発を招いた。

 1957年、“一億総白痴化”とは、テレビやある種のメディアは低俗なもので、想像力や思考を低下させてしまうと、社会評論家大宅荘一が生み出した流行語だ。1970年代の“一億総中流”は、国民の大多数が自分を中流だと意識しているということである。これらの言葉は国民の真の共感を得ることなく、無意味に消滅していったのではないかと思う。

 10年後の2025年、4人に1人が75歳以上という高齢化社会の到来は、医療、介護、福祉サービスへの需要や依存が高まり、このままの施策を続けていたのでは当然、国の財政は壊れそうだ。

 人がそれなりに活躍するためには、その前に、病気をしない健康な身体が絶対条件である。その実現のために、81歳の私はこの言葉を大切にしている。それは、『宇宙飛行士は早く老ける』の著者ジョーン・ヴァーニカスが書いている、“人間は長命な生物で長い人生が残されています。ただ、いたずらに長く生きることではなく、可能な限り活動的な生活を営んで生きていくこと。そのためには“重力”を存分に活用しましょう。”というもの。何を意味するのかといえば、動け、頭脳を使え、身体を使え、心を使え、怠けるな、ニュートンの第二法則を活用せよ、ということ。進化した運動療法である、加速度三次元振動療法は、見事にその成果を出し始めている。

 プロティア・ジャパンはすでに“アクティブ エイジング カンパニー”の商標登録をとり、企業理念として、社会に向けて現実をしっかりと踏まえた啓蒙活動をしていく。

“一億総活躍”がイメージさせるものは、素晴らしい一億の国民であるが、何かそこには現実味のない思いが私にはある。本当に人や社会の役に立てて、無用の長物にならないために、国民一人一人が今こそ何をなすべきなのか真剣に考えるべきではないか。もう間に合わない、急げ!急がなければ!

 大阪大学最先端医療イノベーションセンターを訪問したときに“医療と非医療の調和”というポスターが目に留まって以来、アクティブ エイジングの啓蒙用語として使わせていただいている。日本の医療はほかの先進国に負けていない。でも非医療的分野はどうだろうか。さまざまな方法論が氾濫する中で、消費者にも混乱を招いているのは確かだ。このままでは、日本の社会構造の劣化は間違いなくやってくる。“一億総健康”を実現するためには、一人一人に賢い判断が求められる。

戸澤 明子

株式会社プロティア・ジャパン 取締役会長/学校法人 日本医科大学 元評議委員/医師

いち早くアレルギー治療に関心を持ち、アレルギー外来を設置。多くのアレルギー疾患の臨床経験を持つ。現在は株式会社プロティア・ジャパンの代表として、医師の経験を活かし、 正しいスキンケアの普及活動に全力で取り組んでいる。
著書に 「50歳から輝く人、30歳で老ける人」(幻冬舎)がある。

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